健康保険の被扶養者要件(国内居住要件)についての改正案が示されました

2019年1月25日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法.
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昨年(平成30(2018)年)の臨時国会にて出入国管理法改正法案が審議された際、このまま法案が可決したとして、健康保険制度の扶養認定基準がこのままでよいのか、という点が問題となりました。

現行のルールと認定の厳格化

日本で働く外国人本人は、労働時間など日本人と同様の一定要件を満たせば被保険者として強制加入となります。一方でその家族については、海外に居住していても、被扶養者として一定の収入要件を満たす場合には、日本に生活の拠点がなくても健康保険から給付を受けられる、というのが現行のルールです。

実は本件、出入国管理法改正法案が取り沙汰される前から問題となっており、昨年の3月にはその扶養認定事務が厳格化されるという通知が公表されたばかりでした。

・日本年金機構 海外にお住まいのご家族について 扶養認定を受ける場合は次の手続が必要です

現況申立書という様式に、収入や仕送りの状況について詳しく記載しなければならないこととなりました。
そして、今後さらに外国人労働者が増え、生活の拠点が日本にない被扶養者も増えると、日本の医療費に影響が大きく、膨張するのではという懸念の声が高まったというわけです。

被扶養者要件の見直しの内容

この件に関する健康保険法の改正法案が、平成31(2019)年1月17日に開催された「第117回社会保障審議会医療保険部会」にて取りまとめられました。その内容がわかりやすく示されている資料が下記となります。

・資料3 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)について

この資料の8ページに、被扶養者の認定において原則として国内に居住しているという要件を導入するという改正内容が示されました。具体的には、

・被扶養者の要件に日本に住所を有する者であることを追加する
・留学生その他の日本に住所を有しないもののうち、日本に生活の基礎があると認められるものについても、例外的に要件を満たすこととする

とされています。
外国人の扶養家族のみを除外することとすると国籍による差別といった問題になってしまうおそれもあるためか、一旦、国内居住要件を原則として掲げ、例外的に、日本からの留学や海外赴任などの場合は要件を満たすこととするという整理になったようです。
例外となる場合の詳細については、下記のとおり、省令で定められる予定とされています。

※例外となる者の詳細は省令で規定するが、留学生や海外赴任に同行する家族など、日本から海外への渡航理由に照らし、これまで日本で生活しており、今後再び日本で生活する蓋然性の高い者等を例示する予定

また、下記のとおり、海外での受診だけでなく、国内での受診のための一時的な来日についても除外する方向性が示されました。

・いわゆる「医療滞在ビザ」等で来日して国内に居住する者を被扶養者の対象から除外する

施行予定日

来週から始まる通常国会に改正法案が提出される見込みで、本件の施行日は、平成32(2020)年4月1日が予定されています。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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