平成31年4月1日施行 労働安衛生法の改正について⑥(終)

2019年1月23日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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⑤労働者の健康情報の取扱い

平成29年5月から個人情報保護法に「要配慮個人情報」という概念ができました。

本人の人種、信条、社会的身分や犯罪の経歴のほか、健康に関する情報も含まれますが、個人情報保護法と施行令からこの部分を要約して抜粋すると、下記のとおりとなります。

・病歴
・身体障害、知的障害、精神障害その他の障害があること
・本人に対して医師等により行われた健康診断等の結果
・健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと

これらの情報は、通常の「個人情報」とは区分され、法令に定める場合等を除いて、本人の同意を得ない場合は取得が禁止され、本人の同意を得ない第三者提供は禁止とされています。

このような、個人情報の保護に関する法律面での規制の強化という要請もあり、企業における従業員の健康情報の取り扱いについても、労働安全衛生法に規定が置かれ、その適正な取扱いが求められることとなりました。

健康情報の適切な取扱い

産業医や産業保健スタッフによる相談体制が整備され、制度が浸透している企業においてはまだしも、産業医の存在を知らない労働者も少なくなく、そのような労働者にとっては、産業医に相談したところで、会社側に情報が筒抜けになってしまうのでは?という不安がつきまとうことは否めません。

このシリーズでお伝えさせてきたとおり、いくら産業医・産業保健機能を法制面から強化しても、労働者が安心して産業医等による健康相談を受けられないようであれば制度はうまく運用されていかないことから、適正管理のための措置の義務化と、どのように講じたらよいかの指針が定められました。

取扱規程を定めることが求められる

それでは何をしなければならないかというと、端的には、企業ごとに労働者の健康情報を取り扱う際のルールを決め、それを規程化してください、ということです。

企業規模や業種によって、取り扱うべき健康情報は千差万別ですし、かかわる産業保健スタッフも異なるため、関係者間で健康情報が伝達され、流れていくフローもかなり異なっています。そのため企業ごとに、衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを労働者と共有することが必要とされました。

指針と取扱規程のひな形

平成30(2018)年9月7日付にて公示された「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」には、取扱いに関する原則となる考え方が示されていて、健康情報を大きく三つのカテゴリーに分けて解説するなど、その方向性は理解できるのですが、果たして、企業ごとの取扱規程をどう作っていったらいいのかについてまではイメージすることができないかもしれません。

そこで、取扱規程のひな形というものが示される方向で厚生労働省にて検討が進められていますが、これが公表されるのが施行日直前の3月頃になる予定であるようです。

なお、指針では「心身の状態に関する情報」という表記が使われていますが、例えば「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」では「健康情報」という表記が使われていることもあり、小欄では、読みやすさなどを優先して「健康情報」という表記を使用しています。

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