70歳到達時の厚生年金の手続が省略できることとなる改正

2019年1月11日 | から管理者 | ファイル: 厚生年金保険法.
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平成31(2019)年1月7日付小欄下記記事において、

「電子申請が義務化(大企業等)される改正のうち社会保険関連の改正省令が公布」

当該改正内容が含まれる「平成30年12月28日号外第291号にて公布された健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令には、電子申請義務化以外の改正項目も含まれますがこれらについては追って取り上げる」とさせていただきましたが、本日はこの件について取り上げさせていただきます。電子申請義務化の件とはまったく異なる分野の話です。

被保険者が70歳になったときに行わなければならない手続

70歳以上の従業員がいない企業にとってはまったくイメージがわかない世界の話かもしれませんが、社会保険の被保険者が70歳に達して引き続き働き続ける場合、健康保険は引き続き75歳まで加入となりますが、厚生年金保険は70歳で資格喪失となります。
この際に、厚生年金保険の資格喪失届を提出しなければならないのですが、これに加えて「70歳以上被用者到達届」(以下「70歳到達届」)という書類も合わせて届出をしなければならないこととなっています。

「70歳到達届」とは

厚生年金保険の被保険者としての資格は喪失となるので、厚生年金保険料を納める必要はなくなり、年金額計算の基礎にもならなくなるわけですが、一方で受け取る給付(老齢厚生年金)には影響が残り続けます。その方の受ける給与水準により、在職老齢年金制度が適用され、年金額の全部または一部が支給停止される場合があるということです。
日本年金機構からすると、厚生年金保険を資格喪失することにより、その方の70歳以降の報酬月額を把握できなくなってしまいますので、在職老齢年金の計算のため(だけ)に、「70歳到達届」により報酬月額を届け出てください、ということになります。

平成30年3月の改正を振り返る

「資格喪失届」に加えて「70歳到達届」を合わせて届出、と書きましたが、これは正確には平成30(2018)年3月以前のことでして、「資格喪失届」と「70歳到達届」が1枚の様式に統合されるという、ある意味画期的な改正がありました。それからわずか1年もたたないうちに、さらに画期的と言える、そもそもその手続しなくていいですよ、という改正が行われることとなったのです。

資格喪失届及び70歳到達届を不要とする改正

電子申請義務化の件とはまったく異なる分野の改正とは、「資格喪失届」及び「70歳到達届」の提出を不要とする改正です。
「資格喪失届」と「70歳到達届」を1枚の様式に統合するというだけでも、かなりのプロセスが必要と思われ、統合に至るまでの苦労がしのばれますが、それからわずか1年程度でそもそもなくてよいこととしてしまうという流れは、その苦労が無駄ではないかと思われる向きもあるかもしれません。が、決してそうではありません。様式そのものが廃止されるわけではないのです。

ただし、引き続き届出が必要な場合

ここから先は本当に実務に影響のありそうな方だけ読んでいただければと思うのですが、70歳から報酬月額が下がる場合は、引き続き届出が必要となります。この点に気づいた方がいて、パブコメに意見をのせたところ、省令にこの点に関する細かな説明が加えられるという修正が行われました(別紙の意見欄2つ目、ご興味のある方だけどうぞ)。

・パブリックコメント 「健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令案(仮称)」に関する意見募集の結果について

すなわち、その修正は、

(当該者の標準報酬月額に相当する額が第十条の四の要件に該当するに至った日の前日における標準報酬月額と同額である場合に限る。)

というかっこ書きが加えられたもようなのですが、このことにより、標準報酬月額が同じ場合だけ省略できるのね、ということがはっきりとわかるようになりました。逆に言えば、標準報酬月額が下がる場合に届出を怠ると、日本年金機構側の登録は当然書き換えられないから気をつけてくださいね、というメッセージと受け止めるべきなのでしょう。

業界、業種によっては70歳以上の方を多数雇用している企業も増えてきていて、そのような企業にとっては朗報な改正ですが、一見楽になれるようで落とし穴のある内容になっています。

施行日

施行日は、平成31(2019)年4月1日です。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

 


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