後期高齢者医療制度の保険料についての改正の方向性が報道された件

2018年12月10日 | から管理者 | ファイル: 高齢者医療確保法.
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本日は、企業実務には直接あまり関係ありませんが、この週末にネット上などで少し話題になっていた標記の件を取り上げさせていただきます。

保険料を軽減するしくみ

まず現在の制度を概観しておくと、低所得の方などについて保険料を軽減するしくみがあり、大きく分けて、①低所得者向けのものと、②75歳で後期高齢者医療制度に移る際に被扶養者だったため保険料を負担していなかった方についてのものとがあり、今回報道されているのは①についてです。

ちなみに詳細は割愛しますが、②については、すでに保険料を軽減するしくみを縮小する経過措置が進行しているところです。

保険料を軽減するしくみのうち①の内容

保険料は、所得に応じて決められる所得割と、所得にかかわらず一律に負担する均等割をベースに決定されます。このままですと低所得者でも均等割はかかってきてしまうので、これを軽減するしくみがあります。都道府県により水準が異なりますので、東京都の例でみていきましょう。

軽減の基準
(総所得金額等の合計が下記に該当する世帯)

軽減割合

軽減後の金額

33万円以下で被保険者全員が年金収入80万円以下
(その他の所得がない)

9割

4,330円

33万円以下で9割軽減の基準に該当しない

8.5割

6,495円

33万円+(27.5万円×被保険者の数)以下

5割

21,650円

33万円+(50万円×被保険者の数)以下

2割

34,640円

東京都の均等割額(平成30年度) は43,300円ですが、例えば9割軽減の場合38,970円が軽減され、4,330円の負担となるという意味です。
政令に規定されている軽減割合は7割なのですが、軽減割合を9割と8.5割として、さらに負担を軽くする特例措置が講じられているところです。

軽減特例を縮小する改正の中身

軽減措置のうち、9割と8.5割とする特例を廃止し、政令に規定されている本来の7割軽減にするというのが報道された検討されている改正の内容です。

現行

改正後

差額

軽減割合

軽減後の金額

軽減割合

軽減後の金額

9割

4,330円

7割

12,990円

+8,660円

8.5割

6,495円

+6,495円

このような改正の検討に入った、というのが報道の内容です(報道ではここまで細かく書かれていないものが多いようです)。

起きている誤解

以上ご紹介しましたとおり、今回の改正の方向性の内容は、保険料の話であって、給付の話ではありません。これを踏まえて、各媒体の記事の見出しの主な例を振り返ってみると、

A「後期高齢者の医療保険料、負担増へ」
B「保険料の軽減廃止を検討」
C「低所得高齢者の医療費軽減廃止へ」

A・Bはいいのですが、Cがわかりにくいこととなっており、この見出しを見て、給付の自己負担割合である1割負担(一般・住民税非課税)が見直されると誤解された方が見られたようです。

現役並み所得者の方の自己負担割合が3割であることと、記事中に「軽減割合が9割であるところを7割に」といった記載もあったため、1割負担の方が3割負担になる?という錯誤が起きていたのでしょうか。

記事を書いた方がわかっていなかったのか、わかったうえであえてこのような書き方のしたのかはわかりません。(広い意味で)保険料も医療費のうちであるととらえるとすれば直ちに間違っているというわけでもありませんが、ふつうは医療費と書いてあったら、窓口負担割合のことを想像してしまうかもしれません。

施行予定など

施行は、来年の10月1日が予定されているとのことですが、検討に入った段階であり、決定されたわけではありません。

ちなみに、窓口自己負担を1割負担から2割負担に引き上げる検討は、今回の報道の改正とは別に進められていますが、時期なども含め今のところ決定されていません。


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