健康保険・厚生年金保険における報酬と賞与の区分が明確化される改正

2018年11月7日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 厚生年金保険法.
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健康保険・厚生年金保険における報酬や賞与の定義は、なかなか微妙なところがあり、通知によってその取扱いが示されているところですが、その通知に改正が行われることとなりました。

二つの通知

昭和53(1978)年6月20日に発出された二つの通知があります。両方とも、その名称が「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて 」という同じものであることがさらに事態をわかりにくくしているところもあるように思うのですが、整理すると下表のとおりとなります。

通知番号 通称 内容
保発第47号・
庁保発第21号
局部長通知 「報酬」の範囲や「賞与に係る報酬」の定義、算定方法などを規定
保険発第72号・
庁保険発第9号
課長通知 局部長通知に規定される語句についての説明などを規定

局部長通知における定義だけではわからないところもあるようなので、さらに課長がその解説をするという重層構造になっています。

平成27年10月の改正を振り返る

まずは、平成27(2015)年10月1日に改正された内容を振り返ってみましょう。課長通知に、下記のとおりの説明が加えられました。

「通常の報酬」には、一か月を超える期間にわたる事由によって算定される賃金等が分割して支給されることとなる場合その他これに準ずる場合は含まれないこと。

当時、もともとの性格は賞与であるものの、形式上賞与を分割して毎月の手当として支給することにより、社会保険料の負担軽減を図るというグレーな手法が一部で広がっており、これを問題視した厚生労働省が、本改正を内容とする通知を発出することに至ったわけです。
もともと賞与は1か月を超える評価期間をベースに支払っているはずなので、それを分割して支給したとしてもそれは「通常の報酬」とは見なしませんよ、という意味の改正でした。

平成31年1月4日適用の改正の内容

今回の改正は、平成31(2019)年1月4日から適用となりますが、通知そのものはすでに平成30(2018)年7月30日付にて発出されていまして、先般、日本年金機構のWEBサイトにもその内容が公表されました。

・日本年金機構 「【事業主の皆様へ】報酬・賞与の区分が明確化されます」

今回の改正も「課長通知」のみの改正であり、『「「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について」にかかる留意点について』のQ&Aの1にも示されているとおり、従来の取扱いが変更になるものではなく、より明確化して徹底を図ることが目的とされています。

「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」及び「賞与」は、名称の如何にかかわらず、二以上の異なる性質を有するものであることが諸規定又は賃金台帳等から明らかな場合には、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであること。

新たに加えられた課長の説明を読んでも、具体的にどういう場合を言っているのかよくわからない感じがする方は、Q&Aの3の3種類の事例をご覧になるのをおすすめします。ここに書かれていることを端的に表にまとめますと、下表のようなイメージになると思います(この表だけではよくわからないと思いますので、Q&Aの3と合わせてご覧ください)。

給与規程 賃金台帳 取り扱い
事例1 手当A 手当A1 報酬
手当A2 賞与
事例2 手当A1 手当A 報酬
手当A2 賞与
事例3 手当A 手当A 報酬に係る賞与
(支給額から毎月定額により支給される手当と半年ごとに支給される手当が一体で支給されていると考えられる場合)

いったい何が起こっているのだろう、という感じもしますが、一方で、当たり前のことといえば当たり前のことが示されたという印象もします。

今までとくに悪気なく、知らずにこうなってしまっていた、というケースも少なからず存在すると思われ、そのようなケースは注意が必要ですが、この通知の改正が広く周知されることを願うしかありません。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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