保育所「落選狙い」問題の解決策の方向性が示されました

2018年10月24日 | から管理者 | ファイル: 育児介護休業法, 雇用保険法.
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長らく問題となっていた保育所の「落選狙い」問題ですが、 平成30(2018)年10月22日に行われた内閣府の地方分権改革有識者会議「第85回提案募集検討専門部会」にて、その解決のための方向性が示されたとの報道がなされています。

この問題の詳細をお知りになりたい方は、小欄をご参照ください。

平成30(2018)年7月5日付 「入所保留通知書(旧 入所不承諾通知書)問題」

この件に関する地方自治体の厚生労働省に対する要望は、下記のような内容でした。

育児休業の取得及び育児休業給付金の支給期間の延長要件である「保育が実施されない場合」の挙証資料を、入所保留通知書の提出がなくても育児休業等の延長が可能になるように制度を改正して欲しい。

筆者は、上記7月5日付記事においても「一筋縄ではいかない」と否定的な見解を示していましたが、厚生労働省からの回答はやはりこの点を改正するというような回答にはならなかったようです。

厚生労働省の回答

第85回部会の「地方からの提案個票(各府省第2次回答まで)」という資料の33ページ(最終ページ)にその回答の内容が記載されています。

○ その上で、保育所等の利用調整に当たり、入園希望者が申し込んだ保育所等に入れなかった場合に育児休業の延長が可能か否かをあらかじめ表示させる等の方法により、保育ニーズの高い方を優先的に扱うなど、運用上の工夫をすることで、公平な利用調整を実現するとともに、過剰な事務負担の軽減を図ることもできると考えており、具体的な手法について今後お示しすることを検討している。

ちょっとわかりにくい文章のように思えますが「申し込んだ保育所に入れなかった場合には育児休業の延長が可能」というチェック項目を設けて、ここにチェックをした方については、保育ニーズが低い人なのだなと自治体が判断し、その後の選考に入ることなく入所保留通知(=落選通知)を出しますよ、といったことのようです。

本件に何らかの形で携わっている方には、時間があればぜひ上記資料(=地方からの提案個票)のうち本件にかかわる「育児休業等の期間延長にかかる要件緩和」(29~33ページ)の項目をお目通しいただくことをおすすめします。
なぜなら、本件に関するネット上の記事などはややもすると全体像を理解できていないまま書かれているのが明らかにわかってしまうようなものも多い一方で、この資料は事態を正しく理解するには最適なものとなっているためです。

入所保留通知書という役所が出す1枚の紙の問題から、待機児童数の正確な把握やこれに基づく保育所の整備への影響、ひいては、日本における少子化克服といった様々な問題にも悪影響があるのではないかといった指摘もなされているところです。

厚生労働省が出した現時点の回答は、今一つはっきりしない、すっきりしない印象があることも否めませんが、多様化する保育ニーズや企業ごとの制度がある中、現実的な解決を図ったものといえるでしょう。

企業実務への影響

小欄は、企業の人事・総務担当者向けに書かれているものですが、今回示された厚生労働省の回答の方向性で事態が進むとすれば、特段企業実務への影響はないということになります。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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