平成30年10月1日から健康保険の被扶養者認定事務に変更がある件

2018年9月21日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 厚生年金保険法.
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日本人横綱が誕生して以来、大相撲のブームが続いています。
よく話題になるのが、横綱、大関に昇進する基準について、基準は一応あるもののその運用においてはあいまいな側面があり、基準を満たしていても昇進できなかったり、基準を下回っていても昇進できるケースが見受けられることです。
大相撲という特殊な世界の中において許されることで(許し難いと感じる方も多いでしょうが)、こういったことが国の法律や制度においてはあってはならないことであるものの、似たようなことが現実に存在していて、この度その是正がなされるという画期的な動向をご紹介させていただきます。

健康保険の扶養認定基準

健康保険の被扶養者になることができる者の要件は、健康保険法に、一定の親族のうち「主としてその被保険者により生計を維持するもの」と規定され、「生計を維持するもの」に該当するか否かの判断は、通知によりその基準が示されているところです。
今回変更が行われたのはすでに存在する基準そのものではなく、「生計を維持するもの」に該当するか否かをいかに確認するか、すなわち、どのような添付書類によって確認を行うかという、その確認方法についての統一的な基準が示されたということになります。

異なる運用、添付書類

健康保険の扶養認定にまつわる実務に直接携わったことのない方からすれば、少し信じがたい話しかもしれませんが、家族を被扶養者に追加する際の「健康保険被扶養者(異動)届」の添付書類は、保険者ごとに千差万別であり、運用にあたっての基準も細かな部分においては独自のルールを設けている場合があったりするため、なかなか一筋縄ではいかないところがあります。
もちろん、全体の9割以上は疑義がほとんどないケースなのですが、残りの1割程度(あくまで感覚的な割合)でかなりの労力を要する場合があったりします。
千差万別な状況は、大きく分けて下記の二通りに整理することができます。

・協会けんぽと健康保険組合など保険者ごとに異なる
・同じ保険者でも、対応する人や時期によって運用が異なることがある

協会けんぽ(日本年金機構)における変更

健康保険組合の事務に携わっている方からすると信じられないことかもしれませんが、これまで協会けんぽ(実際の事務は日本年金機構)の扶養認定においては、多くの場合、事業主が扶養認定に関する確認をしたことを申し立てることにより、確認書類を添付することなく扶養認定が行われるという運用がなされていました。
今回、申立てのみによる認定は行わず、確認書類に基づく認定を行うよう取扱いが変更されますが、一定の要件を満たした場合には書類の添付を省略することが可能な場合もあります。詳しくは、日本年金機構の下記サイトをご参照ください。

・日本年金機構 「健康保険被扶養者の手続きについて 平成30年10月1日から、健康保険被扶養者の手続きが変更になります」

健康保険組合における変更

今回興味深いのは、協会けんぽ(日本年金機構)に対してだけでなく、同様の通知が健康保険組合に対しても発出されていることです(ある意味当然と言えば当然です)。
通知の原文は下記ですが、第1号が協会けんぽ理事長宛、第2号が健康保険組合理事長宛となっており、中身は同様の内容です。

「日本国内に住所を有する被扶養者の認定事務について」(平成30年8月29日 保保発0829第1号・第2号)

また、この通知だけではよくわからないこともあってか、この通知についてのQ&Aも公開されています。こちらも前半部分が協会けんぽ宛、後半部分が健康保険組合宛です。

「日本国内に住所を有する被扶養者の認定事務について」に関する留意点について(平成30年8月29日 事務連絡)

さらに、日本年金機構宛の通知

協会けんぽ宛と健康保険組合宛の通知の内容はほぼ同じ内容なのですが、これ以外に日本年金機構宛の通知というものも存在していて、こちらは微妙に内容が異なっています。例えば、Q&Aの数が前者は19であるのに対して後者は26あるのです。

「日本国内に住所を有する被扶養者の認定事務について」(平成30年8月29日 保保発0829第4号)

「日本国内に住所を有する被扶養者の認定事務について」に関する留意点について(平成30年8月29日 事務連絡)

相違点は数多くあるためここで掲げるのは避けますが、扶養認定事務に深く携わっている方にはぜひお読みいただいたい内容ですし、相違点から浮かび上がってくることもあるようです。

適用日と今後

これらの通知の適用日は平成30(2018)年10月1日とされています。
また、こういった通知には異例とも言える、下記のような記述があることにご留意ください。

今後も現状を踏まえつつ、改定を行う旨ご承知おきいただきたい。

「改定を行う可能性がある」「改定を行う場合がある」ではなく「改定を行う」と言い切っています。具体的な何かが想定されているものと思われます。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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