改正労働基準法の経過措置③(終)

2018年5月7日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働基準法.
Pocket

働き方改革関連法案提出直前の最終的な修正にあたって、厚生労働省は「残業時間の上限規制の導入」について、中小企業の実態に配慮して指導を行う旨の経過措置を書き加えるという報道がされていました。

改正法附則の第3条第4項の内容

実際の条文を見てみましょう。労働基準法改正法附則の第3条第4項に書かれています。

附 則
第3条
4 行政官庁は、当分の間、中小事業主に対し新労基法第三十六条第九項の助言及び指導を行うに当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて行うよう配慮するものとする。

「新労基法第三十六条第九項」とは、今回新たに加えられる条項ではなく、現行「第三十六条第四項」に規定されている、労働基準監督署が36協定について事業主又は過半数労働者代表に対して必要な助言及び指導を行うことができることとする根拠規定です。
今回の改正で多数の「項」が加えられるため、現行第4項が第9項に繰り下がります。

少し内容を見てみますと、「労働時間の動向」はまさにそのもの、「人材の確保の状況」とは昨今の人手不足の状況を鑑みるということでしょうが、「取引の実態」とは一体何なのでしょうか。
今般の働き方改革の計画が進められる中で、大手広告代理店が書類送検されるというニュースが大きな話題となりました。
その後、当該社内における時間外労働の削減は進んだようですが、その下請である中小企業にしわ寄せがいってしまっているという噂も流れました。
このような中小企業1社ではどうにもならないような「取引の実態」が存在するような場合は、一要素として考慮されるということを指しているものと思われます。

一方で、努力義務

一方で附則第3条第2項には、

附 則
第3条
2 前項の規定により読み替えられた前条の規定によりなお従前の例によることとされた協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定をするに当たり、新労基法第三十六条第一項から第五項までの規定により当該協定に定める労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させることができる時間数を勘案して協定をするように努めなければならない。

との規定もあり、中小企業への適用は1年遅れとなるものの新法による労働時間の上限時間数を勘案すべきとする努力義務が課されています。

中小企業は配慮されるから何もしなくていいということではなく、附則第3条第4項に規定されている諸事情が特段存在しないにもかかわらず何も努力していないようなケースは、容赦のない(普通の?)指導がなされることを認識しておく必要がありそうです。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


タグ:

コメントは締め切りました。