労働基準法の改正条文はなぜわかりづらいのか

2018年4月12日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働基準法.
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今般提出された働き方改革関連法案のように、改正法の施行日が多岐にわたる際、どの改正項目がいつ施行なのかを読み解いていく作業は大変な苦労があります(制作する側も大変なことと思います)。

厚生労働省の下記WEBサイトにも項目ごとの施行日は記載されていて「概要」を把握することはできます。

・厚生労働省 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要」

しかし、若干わかりづらい部分もあるため、法律案案文で確認しないと誤解が生じてしまうおそれもあります。

・厚生労働省 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案案文」

項番号がない?

法律案案文を読んでいますと、ただでさえ改正法のいわゆる「改め文」は読みづらいのですが、労働基準法についてはさらに難儀することとなります。
なぜなら、労働基準法は古い法律であるため項番号というものが存在しないからです。
いやそんなことはない、私が手にしている法律書には項番号が振ってある(あったはず)、と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、それは編集する出版社が読みやすくするために便宜的に振っているだけのことであって、労働基準法という法律の「原典」には、項番号が振られていないのです。

その証として、本来の項番号はただの数字(2、3など)ですが、原典に項番号がない法律に振られた項番号は丸で囲まれた数字(②、③など、またはインターネット上は〇2、〇3など)となっているはずです。

ある意味芸術的とも言える36条の改正

例えば、今回の主要改正項目である「時間外労働の上限規制の導入」は、36協定の名称の由来ともなっている第36条が大幅に改正されることにより行われます。
これまでの時間外労働の規制は、その具体的な内容が省令や告示に委任されて定められていましたので、法第36条自体は計4項からなる内容的には比較的シンプルな条文でした。
しかし今回、法律に具体的な内容を記載することによって規制をかけていくこととなるため、計7項が加えられ、合計11項にも及ぶ膨大な条となります。

該当箇所を見ますと、「第三十六条第一項に次に次の五項を加える。」とあるのですが、その後に項番号はありません。段落として一文字落としてある5か所がそれぞれ第2項から第6項になりますが(法律案案文P.3~P.6のあたり)、慣れていないとその切れ目が瞬時にわかりません。
さらに、項番号が存在する法律であれば「第二項を第七項とし…」といった、現行の項番号を繰り下げる説明がなされるはずですが、そのような記載もありません。
まさに忖度しながら読む、文学作品のように行間をかみしめながら鑑賞するという読者側のリテラシーが求められる高度な内容のものとなってしまっているわけです。

もちろん「改め文」で構成される法律案案文までに目をとおす時間はなかなかなく、「概要」だけで把握しなければならないケースも多いのですが、万が一、法律案案文に目をとおさなければならない事態に陥った際には上記のような留意が必要です。


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