労働時間を把握する義務

2018年3月18日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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提出されそうで未だ提出されない状況が続く働き方改革関連法案に関して、労働者の労働時間の把握を企業に義務づける内容を盛り込んだうえで提出する方針を厚生労働省が固めた、というニュースが流れました。
このニュースを読んで、そもそも企業に労働時間の把握義務ってないのでしたっけ、と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。

労働基準法の世界観

この点については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の冒頭「1 趣旨」に

労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。

と明記されているとおりです。すなわち、法律に把握義務が明確に書かれているわけではないけれど、把握しないと割増賃金などをきちんと払えないはずなので、適切に管理してくださいね、と説明しているわけです。

そのような考え方が背景にあるため、「2 適用の範囲」で、

労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者であること。

と、このガイドラインの対象外となると一度言ったうえで、

なお、本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること。

なお書きとして、賃金計算のためではなく、健康管理のために適正な労働時間管理を行う責務がありますよと整理しています。

労働安全衛生法の世界観

一方、労働安全衛生法は、過重労働による健康障害を防止するため、一定の長時間労働があった労働者に対して、医師による面接指導を行うよう、企業に義務づけています。
現状は、時間外労働時間数を把握する義務のようなものは労働安全衛生法にも明記されていないわけですが、この点について昨年秋に公表された「働き方改革関連法案要綱」においては、23ページに、

面接指導制度に関し、全ての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならないものとする旨を厚生労働省令で定めることとする。

とされていました。
すなわち、昨年の法案の概要の段階では、「法」ではなく「施行規則」(=労働安全衛生規則)に定めることが予定されていたわけです。
この度のニュースは、当初は省令で規定するはずだった予定を見直して、法律に書く方針を固めたということのようです。

実務的には対象となる労働者の範囲に注意が必要

労働安全衛生法は、あくまでも健康管理が主眼であるため、労働基準法の管理監督者のような対象外はなく「すべての労働者を対象」としているところが留意すべき点です。
管理職は労働時間管理をしていないといった運用が見受けられることがありますが、深夜労働を除いて労働基準法の世界なら許されるところです。
しかし働き方改革関連法案の施行後は、労働安全衛生法の健康管理という側面での要請からそれが許されなくなるという実務的にはややインパクトが大きい改正内容となっています。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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